■当時はまだ珍しかった「シルエイティ」
ご存じのとおり、シルエイティは180SXのフロントまわりをS13のパーツに交換した、いわば顔面スワップモデル。
同メーカー内に兄弟車が存在するという、時代を反映した奇跡があったとはいえ、180SXとS13シルビアという、どちらも魅力的なモデルが繋がれるというのはロマンティックな話であり、儚くも美しいチューニングカーらしいエピソードであった。
そして、ギャルっぽい見た目ながら清楚で真っ直ぐな真子に対し、おしゃべりだがどこか冷静で妖艶な沙雪。アンビバレンスな魅力を持つ2人は、どちらも静になり動となりうる存在で、1台のクルマにこの2つの個性が乗り合わせていることは、シルエイティの素性とそのまま重なる部分だ。
シルエイティというクルマは、今でこそ人気車、名車として知られているが、当時はまだ珍しかった。同作品でシルエイティを知ったという人も多いという。そのため、バトル中も、このクルマの、どこか構図がアンバランスで、精巧な虚構のようなディテールを見過ごすことができない。
結果、勝ち負けの展開より、自然と映像美が脳裏に焼きつくことになる。身も蓋もない言い方だが、このバトルが、後の世におけるシルエイティの評価を高めたのは事実である。