■読者の気持ちを投影させる魅力
今でこそ美少女が戦うマンガやアニメは多くなったが、連載当時、ことクルママンガにおいて、主人公と対等にバトルする女性ドライバーを登場させたことに、まず驚かされた。真子は、ステアリングを握っている時は、強い意志を持ち、クルマを能動的に楽しむ強いヒロインなのである。
一方で、池谷との恋愛パートでは、無垢で健気で、走り屋系男子の幻想を投影できるキャラクターだ。この男子の妄想に説得力を持たせているのは、女性としての佐藤真子の美しいデザインであり、それを動かすストーリーだ。隣に座る沙雪も造形として整っているし色気を放っているのだが、美しいコメディエンヌとして活躍し、真子の魅力を引き立てている。
バトル後、真子と沙雪は、池谷や拓海たちを連れだってプールを訪れる。2人の女神は、ここで水着姿を見せて秋名の童貞たちを惑わす。そして、マンガのヒロインとしては異例な展開だが、真子は池谷に向かって「バージンもらってください」と発言(!)。
決して現代的とはいえないし、ちょっとイタいクルマオタクにもなりきれていなかった彼女だが、ここではひとりの等身大の女性として、その愛を表現している。
甘い香りに満ちた少女マンガ的な結末でなく、勘違いやタイミング的なすれ違いもあり、結ばれることはない真子と池谷。特にラストはオニのように残酷な展開だが、マンガとはいえ、人生そう簡単にうまくいくわきゃないということだ。この時、読んでいるこちらは、池谷の未熟な行動に憤りを覚えるわけだが、では自分だったらどうするべきだったか、その判断を迫られる。
つまり、この佐藤真子という女性は、作中で大いにセクシャリティを表現しながら、男の欲望を肯定し、読者にも池谷と同じ思いを経験させる稀有なキャラクターなのだ。
■1話丸ごと掲載(Vol.51「ホレた相手が悪いかも?」)
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