『頭文字D』を彩った伝説の名車列伝03 三菱 ランサーエボリューションIII編

『頭文字D』を彩った伝説の名車列伝03 三菱 ランサーエボリューションIII編

 連載期間18年の間にコミックス全48巻を刊行し、一大ブームを巻き起こしただけでなく、現在も読まれ、そしてさまざまな角度から検証され続けて、ファン層を拡大しつつある怪物マンガ『頭文字D』。
 
 同作品に登場したクルマたちの世界観と魅力を読み解いていく本連載。第三回で紹介するのは、三菱ランサーエボリューションIII。主人公・藤原拓海の前に立ちはだかった「4WD」という“イノベーション”を紹介する。

文/安藤修也 マンガ/しげの秀一

■第1回 佐藤真子の愛車「日産 シルエイティ」編
■第2回 中里毅の愛車「日産 R32型スカイラインGT-R」編


■「皇帝」が操るランエボ

 泣く子も黙る三菱の「ランサーエボリューション」といえば、とかくスバルのインプレッサWRX STIと対比されがちだが、『頭文字D』の作中では、想定ライバルが「FR」となっている。

 10巻の時点でまだインプレッサが登場していないこともあるが、立ち位置としては「4WD」の象徴であり、唯一無二のラスボス的存在だった。

【画像ギャラリー】頭文字Dの名車を実車で見る! ランサーエボリューションIII

 日光に拠点を置くランエボのチーム「エンペラー」のリーダー、須藤京一が愛車としているのは、あえての先代モデル・ランサーエボリューションIIIだ。連載時、すでに先代型となっていたが、決してハコスカやS30フェアレディZのような懐かしさを感じるほどではない。

 作中では描かれていないが、須藤京一も、郷愁ではなく、きっとなにかしらのこだわりを持っていたのだろう。

 仕様は、メタルガスケット、ハイフロータービン、ブーストコントローラー、CPU変更、スポーツマフラーなどで武装されており、310馬力を発揮する。さらにバトル中、「パンパン」と派手に音を鳴らすミスファイアリングシステムを搭載し、ターボのトルクとNAのレスポンスを両立する、「突っ込んでよし、立ち上がってよし」(高橋涼介談)の最強のコーナリングマシンに仕上げられている。

■名車 ランサーエボリューションIIIの時代

ランサーエボリューションIII(1995)/全長4310×全幅1695×全高1420mm、エンジン:2L直4DOHCターボ(270ps/31.5kgm)、価格:237万8000円(RS)
ランサーエボリューションIII(1995)/全長4310×全幅1695×全高1420mm、エンジン:2L直4DOHCターボ(270ps/31.5kgm)、価格:237万8000円(RS)

 1992年のランサーエボリューションIデビュー時、「エボリューション」というどこかポップな名前に騙された人も多い。

 しかしその実は、機動力の高いランサーをベースに、当初から高性能な2.0Lターボエンジンとフルタイム4WDを採用し、駆動力制御システムをはじめとしたさまざまなハイテクシステムを搭載してきた、ドラスティックで野心的なモデルだった。

 そして3年後の1995年に登場した「ランサーエボリューションIII」は、第一世代ランエボの最終進化形となる。

まだ競技車両が量産車に近い時代。WRCという世界の舞台で暴れまわったランエボIIIは、まさにグループA時代を象徴するようなクルマだった
まだ競技車両が量産車に近い時代。WRCという世界の舞台で暴れまわったランエボIIIは、まさにグループA時代を象徴するようなクルマだった

 この「III」の時代には、不世出のラリードライバーであるトミ・マキネンを擁して世界ラリー選手権(WRC)で大活躍をみせたことで、世界的に「ランエボ」の名を轟かせている。

 WRCの歴史になぞれば、この「III」から「VI」の頃が最も熱い時代だったというファンも多く、サーキットを走るフォーミュラやレーシングカーではなく、ラリーのベース車ということで、手垢のついた表現かもしれないが、ランエボはこの「III」から「公道最強」の名をほしいままにした。

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