『頭文字D』を彩った伝説の名車列伝13 スズキ カプチーノ 編


 連載期間18年の間にコミックス全48巻を刊行し、一大ブームを巻き起こしただけでなく、現在も読まれ、そしてさまざまな角度から検証され続けて、ファン層を拡大しつつある怪物マンガ『頭文字D』。

 同作品に登場したクルマたちの世界観と魅力を読み解いていく本連載。今回は、軽量なハチロクに対して“軽さ”を武器に挑んだマシン、カプチーノを取り上げる。その姿に、現代まで続く軽スポーツカーの原型を見た!

文/安藤修也 マンガ/しげの秀一

◆『頭文字D名車列伝』 連載第1回~第12回はこちらから!

【画像 ギャラリー】名車の実車を写真で見る! スズキ カプチーノ


■伝説的軽スポーツカーとして

スズキ カプチーノ(1991-1998)/全長3295×全幅1395×全高1185mm、エンジン:0.66L 直列3気筒DOHCターボ(64ps/10.5kgm)、価格:145万5800円

 今も昔も軽自動車は大人気ジャンルだが、軽自動車の“スポーツモデル”となると、数が限られてくる。さらに、本格的に走りを楽しむための、ボディ形状がクーペやオープンのスポーツカーとなれば、つい先日、S660が生産終了となったことで、現在はダイハツのコペンしかラインナップされていない。

 しかし、約30年前、軽自動車のスポーツカーは3車種も存在していた。

「ABCトリオ」と呼ばれたその面子は、「A」がマツダのAZ-1、「B」はホンダのビート、そして「C」は、今回紹介するカプチーノである。そのなかで、AZ-1といえば「ガルウイングドア」、ビートといえばS660にも受け継がれた「ミッドシップ」が一番の特徴だが、カプチーノは比較的汎用な造りになっていて他の2台とは対照的であった。

運転席まわりは本当に狭く、体格の大きな人では運転に支障をきたすほど。が、このタイトささえもがカプチーノの魅力であり、「軽自動車のスポーツカー」が到達できた境地である。

 しかし、カプチーノはごく普通のスポーツカー(ルーフは取り外し可能)である、と言うと異を唱える人がいるかもしれない。このクルマは、華美なものを削ぎ落とした、純然たる硬派なスポーツカーなのだ。理想的な前後重量配分を実現したFR駆動で、ターボエンジンをフロントミッドシップ搭載し、軽自動車として初めて4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションを採用したモデルである。

 こうして見ると、その車名のようなファニーな印象はまったくなく、「運転の楽しさに理由などいらぬ!」と言わんばかりに、大上段に構えたクルマであることがわかる。一度でもその運転席に身体を入れたことがある人なら理解してくれるだろうが、あまりにもタイトな造りで中年太り泣かせな運転席は、20世紀のF1マシンのコクピットを想起させてファンの涙を誘う。

■キャッチーなデザインでシビアな戦い

 全体的なスタイリングは、いわゆる古典的スポーツカーの「ロングノーズ&ショートデッキ」である。曲線でまとめられたキャッチーなデザインテイストには、大衆を寄せ付けないような排他性はまったくない。そういう部分では、(運転席の狭さを除いて)親しみやすくポップで、スポーツカー好きに対しても、そうでない層にもサービス精神旺盛なモデルだった。

 しかし、『頭文字D』作中のカプチーノの扱いは、かなりシビアなものであった。ここまで無類の強さを誇ってきた主人公のハチロクを打ち破るため、ライバルが用意した“軽さ”を武器とするマシンとして登場する。

 それまでのライバルが乗ってきたパワフルで強力な戦闘力を持つモデルとはまったく逆の武器である“軽さ”を持ち、ハチロクより速いコーナリングスピードを実現しようという狙いがあった。

 元ラリーストの坂本というキャラが操ったこの車両は、タービンやコンピューター交換が施され、最高出力130馬力を発揮。フロントにはエアロバンパーも組まれていて、もちろんハチロク(960kg)に比べて軽量である(700kg超)。

 最終的には、主人公の雨を恐れない鉄の心臓とヘッドライトを消すブラインドアタックの前に破れてしまうとはいえ、ハチロクを従えながら雨中のコースを4輪ドリフトするビジュアルは、爽快のひと言。軽自動車のスポーツカーの“軽さ”がキーになるという点でもドラスティックなバトルであった。

次ページは : ■後継が望まれる不世出のモデル

シリーズ最新刊

MFゴースト9巻

コミックDAYSで試し読み コミックプラスで買う