天真爛漫な異色ヒロイン!? 『頭文字D』人物列伝02【茂木なつき 編】


■クルマ好きな若者たちを高ぶらせる存在

 そんな、なつきの魅力が大いに感じられるのが、作品序盤で展開された拓海との2つのデートシーンだ。高橋涼介から挑戦状が届いたことで、なつきと秋名湖を訪れた拓海はいつにもましてボーッとしている。

 なつきはそこで初めて拓海が峠バトルをしていることを知り、自分が思っていた拓海の本性を語る。そしてハチロクの車内に入ると、サッカー部時代に拓海が退部した真相を、実は知っていたと告白。気持ちを確かめ合ったふたりは、初めてのキスをする。

 俄然、距離を縮めたふたりは、後日、今度は温泉街をデートしている。ここでは、クルマの魅力について語る拓海を眺めて、なつきは瞳を潤ませる。そして、「負けてもいいけど事故だけはしないでね」といじらしい発言をするのであった。

 このウブなハイティーンが織りなす2つのシーンで、しげの先生は若い恋人たちの生々しい不安や焦燥感を巧みに描写している。その捉え方、切り取り方は、本当にお見事としか言いようがない。

 当時、(地域的な違いはあるにせよ)コギャルは世紀末を謳歌していたが、なつきはまったくスレていなかった。無邪気で、イノセントで……ただ、純真だが、純潔ではない。拓海との1年間の交わりと、それによる微妙な心の揺れ、そしてその後の前向きな決断を見ても、いったいなぜそんなに生き急いでいるのか? と考えてしまいがちだが、若さとはそういうものだ。

 ヒロインによる援助○際というショッキングなストーリー展開は、当時としてはかなり先鋭的だったはずだ。もちろんクルマの描写もバトルの展開も一線級であったが、このマンガが汗臭いカーバトル一辺倒だったら、あれほど多くのヤングたちから支持されたのだろうかと考えると、そうではないと思う。

 帰するところ、茂木なつきというロマンチックな存在は、『頭文字D』が歴史的名作になった理由のひとつなのである。

■1話丸ごと掲載(Vol.40「意外なチューニング」)

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