その走りは記憶に焼き付く! 『頭文字D』伝説モデルの進化列伝02 スプリンタートレノ(AE86型)後編

■ボンネットをカーボン製に変更して軽量化

 プロジェクトDの県外遠征において、栃木の東堂塾に挑んだ際には、プロレーサーである舘智幸のシビックタイプRとバトルすることになる。この時、軽量化を図るためにカーボンボンネットを採用するのだが、カラーもブラックとなった(Vol.238「ホットライン」)。

 作中では最後までそれほど外観の変更が行われなかったハチロクなだけに、このボンネットのブラックカラー化が一番のイメージ変更となったのではないだろうか。これだけでもかなり精悍な印象となり、グッと”本物”っぽさが増すのだった。なおこの時、同時に助手席もバケットタイプに変更されている。 

 この舘智幸とのバトルで、ハチロクは走行中にヘッドライトを消すブラインドアタック走法を初披露しているが、リトラクタブルヘッドライトを閉めた際に、ヘッドライトの上部もボンネット同様に黒く塗られていることに気づく。結果的に、ヘッドライトの開閉次第でハチロクの表情と見た目の印象が大きく変わることになるのだが、これもリトラクタブルヘッドライトのクルマならではの楽しみ方でもある。

 同じ頃、文太がいよいよ自分用のクルマとしてインプレッサを購入して、ハチロクを拓海に譲ることになる。この頃、プロジェクトDの埼玉遠征第1ラウンドが行われているのだが、バトル中のハチロクにドアバイザーがついていない。前戦からの軽量化のための処置かもしれないし、文太から、自分が乗らなくなったので、(タバコを吸わないから)バイザーを取っていいと許可が出たのかもしれない。

 なおこの後、文太からハチロクの名義変更をするよう言いつけられた際に、拓海は「ヘッドライトも軽いやつなんだぜ」と発言しており、ここも軽量化のためにパーツ変更が行われていたことがわかる。

■ラストバトルで華々しく散る

 茨城遠征では、パープルシャドウのゴッドハンドこと城島俊也とバトル。決着がつく寸前で、得意の溝落としを使いすぎたハチロクは、右フロントサスペンションを壊してしまう(バトルには勝利)。しかし、怪我の功名ではないが、この時の修理に合わせて、松本がかなり足まわりに手を入れてくれる。限界域での挙動をよりクイックにする方向でセッティングがリニューアルされたのだ。

 また、同時にリアまわりの重量を減らすため、リアハッチのガラスをアクリルガラスに変更。バックドアもFRP製へと変更された。さらにエンジンは、中間トルクをすこし太らす方向でコンピューターのセッティングが変更されている。

 プロジェクトDにとっては最後の遠征となる神奈川遠征では、第2ラウンドR・T(レーシングチーム)カタリギ戦で、ハチロクはついにロールケージを導入する。一番の目的は衝突時のドライバーの安全性を確保するためだが、同時にボディ剛性の向上も見込まれて、ハチロクのような古いクルマにとってはありがたい装備追加となった。ちなみに拓海は、「がんじょうな箱の中にすわっているみたいな…不思議な感じですよ」と発言している。

 そして神奈川遠征の最終戦、同じAE86トレノの2ドアとバトルすることになるのだが、涼介の指示でエンジンセッティングが変更される。それは、一時期、エンジンの耐久性と戦闘力の両面を追求するためにレブを9000回転に限定していたのだが、改めて1万回転以上回る仕様に戻すことだった。

 結果、シフトチェンジの場面でのギアの守備範囲が広くなったことで、ためらうことなく踏んでいけるようになり、バトル終盤、拓海はそれを利用する。結果、拓海はエンジンをオーバーレブさせてしまい、ハチロクはゴール寸前でエンジンブロー。拓海のとっさの判断とテクニックでバトルには勝利したものの、ハチロクはこのバトルとともに廃車となる。数々の伝説を打ち立て、読者を魅了してきたハチロクは、2度目のエンジン大破で、その最後を迎えたのだった。

■掲載巻と最新刊情報

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