『頭文字D』を彩った伝説の名車列伝05 ホンダ シビックタイプR 編

■ポテンシャルの高さゆえの敗北

 作中に登場するシビックタイプRは、イエローのボディカラーで、赤いフロントエンブレムも付いていないようだ(リアに「R」の文字は見えるが)。言われなければ、タイプRだとわからないかもしれない。

 しかし、この飾らない雰囲気から、同車を操る二宮大輝の、ひいては所属する東堂塾のストイックさが見て取れる。二宮は、モータースポーツ仕込みのテクニックを叩き込まれた猛者たちが所属する東堂塾の現役最強ドライバー。ブレーキングに関して天性のセンスを持っており、シビックタイプRのポテンシャルを限界まで発揮させる。

 バトルの展開に関しては、シビックファンからすると切ないが、マンガという立ち位置で見れば、それぞれの駆動方式とエンジン性能が決着をつけるということで、非常にわかりやすく、そして展開を楽しめる。

 舞台となったコースは、栃木県の塩原市と那須町を繋ぐ某路線。高低差があり、路面のうねりが激しく、落石が多く、あまりクリーンではない。

 ほとばしる自信もあってか、二宮は1本目でケリをつけようと強引に攻め過ぎ、タイヤとブレーキに負担をかけてしまう。その結果、2本目の後半でタイヤが熱ダレをおこし、走りが苦しくなる。フロントに荷重のかかるFFは、FRよりフロントタイヤが不利なのだ。

 そして、最終盤の第四ヘアピンで、高回転型のB16B(タイプRのエンジン)よりさらに高回転型のレーシングエンジンを積むハチロクが伸びをみせ、シビックタイプRから勝利をもぎとっていくのであった。

■日本メーカーならではの世界観

 二宮は、その実力と同様の絶対的な信念を持ち、自らを肯定していくタイプの男だ。バトル前には、「B16Bに比べたら(ハチロクの)4A-Gはガラクタ」などと相手のマシンを見下す発言をしている(ハチロクにはハイスペックエンジンが搭載されていたわけだが)。その過信は、走りの果敢さに現れ、やがて霧散してくのだった。

 しかし、「量産型エンジンとしてはオーバークオリティなほどの高精度なチューニングをほどこされた名機」と作中でも絶賛されるこのエンジンを愛機とすれば、否が応でも高揚感が高まるというもの。強力なフォースを得て暗黒面に支配されてしまうジェダイとも相通じる。やはりこの二宮の果敢さは、評価されるべきものである。

 このエンジンからは、欧州車ともアメリカ車とも異なる、高度経済成長とともにさまざまな電化製品や電子機器を生産して世界に流通させてきた日本のメーカーならではのメカニカルな世界観が感じられる。

 EK9型シビック自体に持ち前の運動神経と敏捷性が備わっていたとはいえ、エンジンというクルマの魂の力によって一流のエンターテインメントカーに仕上げられたシビックタイプRは、ある意味、ホンダの底力を見せつけられたモデルであった。

■1話丸ごと掲載(Vol.218「ブレーキングの達人」)

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