『頭文字D』を彩った伝説の名車列伝05 ホンダ シビックタイプR 編


 連載期間18年の間にコミックス全48巻を刊行し、一大ブームを巻き起こしただけでなく、現在も読まれ、そしてさまざまな角度から検証され続けて、ファン層を拡大しつつある怪物マンガ『頭文字D』。
 
 同作品に登場したクルマたちの世界観と魅力を読み解いていく本連載。前回は、ダウンヒルにおいて理想的な走行性能を備えたミッドシップのMR2を取り上げたが、今回は、FFでありながら究極的なレベルにまでに走りが高められたモデル、シビックタイプRを見ていきたい。

■第1回 佐藤真子の愛車「日産 シルエイティ」編
■第2回 中里毅の愛車「日産 R32型スカイラインGT-R」編
■第3回 須藤京一の愛車「三菱 ランサーエボリューションIII」編
■第4回 小柏カイの愛車「トヨタ MR2(SW20)」編

文/安藤修也 マンガ/しげの秀一


■血湧き肉躍るエンジンのダイナミズム

ホンダ 初代シビックタイプR(1997-2001)/全長4180×全幅1695×全高1360mm、エンジン:1.6L直4DOHC(185ps/16.3kgm)、価格:199万8000円

 ホンダファンの在り方もいろいろだ。たとえば、2輪で培った技術をもとに他メーカーとは一風違ったクルマをリリースする、そのパイオニア精神に惹かれた人たち。そして、1980~1990年代のF1ブームを経験して、アイルトン・セナとホンダエンジンの虜になった人たちもいる。

 さらに、白いボディと赤いバッジの「タイプR」に憧れてステアリングを握ったという人も少なくないだろう。

【画像ギャラリー】頭文字Dの名車を実車でみる! 初代シビックタイプR

 なんにせよ、ホンダ車というのは、“走りの快楽”を帯びたマシンであるということが世間的にも認知されており、その象徴となった「タイプR」シリーズは、現代にも受け継がれ、すっかり成熟している。

 一作目となったのはNSX、次はインテグラだった。その流れで、1997年にシビック(EK9型)にもタイプRが登場したのだが、同車はその後、伝説的なまでに高く評価されることになる。

コンパクトなボディながらスパルタンな走り、そしてなんといっても200万円を切る価格。庶民にも手が届くという意味でも夢のあるクルマだった

 搭載される1.6L直4VTECエンジンは185馬力を発揮し、トランスミッションは5速MTのみの設定、車体の軽量化やサスペンションのリセッティングまで施された。この高回転型エンジンの気持ちよさは、血湧き肉躍るという表現そのもの。

 ホンダイズムはエンジンにこそあり、という明快な答えがそこにあった。おとなしめのエアロパーツや赤いバケットシート、チタンシフトノブと装備でも独自の世界観が表現されていたが、8200回転まで回せるエンジンのダイナミズムを通じて、はじめてそれらを理解できるようになる。

■ポテンシャルの高さゆえの敗北

 作中に登場するシビックタイプRは、イエローのボディカラーで、赤いフロントエンブレムも付いていないようだ(リアに「R」の文字は見えるが)。言われなければ、タイプRだとわからないかもしれない。

 しかし、この飾らない雰囲気から、同車を操る二宮大輝の、ひいては所属する東堂塾のストイックさが見て取れる。二宮は、モータースポーツ仕込みのテクニックを叩き込まれた猛者たちが所属する東堂塾の現役最強ドライバー。ブレーキングに関して天性のセンスを持っており、シビックタイプRのポテンシャルを限界まで発揮させる。

 バトルの展開に関しては、シビックファンからすると切ないが、マンガという立ち位置で見れば、それぞれの駆動方式とエンジン性能が決着をつけるということで、非常にわかりやすく、そして展開を楽しめる。

 舞台となったコースは、栃木県の塩原市と那須町を繋ぐ某路線。高低差があり、路面のうねりが激しく、落石が多く、あまりクリーンではない。

 ほとばしる自信もあってか、二宮は1本目でケリをつけようと強引に攻め過ぎ、タイヤとブレーキに負担をかけてしまう。その結果、2本目の後半でタイヤが熱ダレをおこし、走りが苦しくなる。フロントに荷重のかかるFFは、FRよりフロントタイヤが不利なのだ。

 そして、最終盤の第四ヘアピンで、高回転型のB16B(タイプRのエンジン)よりさらに高回転型のレーシングエンジンを積むハチロクが伸びをみせ、シビックタイプRから勝利をもぎとっていくのであった。

次ページは : ■日本メーカーならではの世界観

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