連載期間18年の間にコミックス全48巻を刊行し、一大ブームを巻き起こしただけでなく、現在も読まれ、そしてさまざまな角度から検証され続けて、ファン層を拡大しつつある怪物マンガ『頭文字D』。
同作品に登場したクルマたちの世界観と魅力を読み解いていく本連載。主役のハチロク(トレノ)は80年代のモデルだが、同作に登場するもう一台の同年代モデルで、高橋涼介が選んだクルマ、2代目RX-7(FC3S型)の魅力を紐解く。
文/安藤修也 マンガ/しげの秀一
【画像 ギャラリー】名車の実車を写真で見る! マツダ RX-7(FC3S型)
■スタイリングのなかに定着させたリトラクタブル
サバンナ、そしてアンフィニとサブネームを付けて親しまれてきた歴代RX-7が、マツダの現在の位置付けを確かなものにしたことは間違いない。
1970年代後半以降に登場したスポーツカーのなかでもロータリーエンジンは異彩を放っていたが、なによりそのスタイリングの存在感がカリスマ性を高めた。初代、2代目、3代目とどのモデルもスタイリッシュで、リトラクタブルライトを中心に描かれたようなスポーティなデザインの完成度の高さは、世界を見回しても抜きん出ていた。
歴代モデルで常にRX-7らしさを発揮してきたデザインに着目するなら、古典的な雰囲気の残る初代SA型、マッシブで塊感のあるFC型、流面形でグラマラスなFD型といったところか。
今回取り上げるのはFC型だが、その後のFD型を知っている我々からすると、(少し乱暴な言い方になるが)ふくよかすぎるとも思えるし、それをあえて具現化している気配さえする。しかしこの塊感が、現在では“定番”デザインとして、多くのカーマニアの心のなかに君臨しているのは言うまでもない。
また、スポーティさの象徴とされるリトラクタブルライトは、国産車ではトヨタ 2000GTにはじまり、初代RX-7が先鞭をつけた。
その後、セリカXX(1981)、スタリオン(1982)、プレリュード(1982)、3代目フェアレディZ(1983)、MR2(1984)、アルシオーネ(1985)とさまざまなクーペモデルに採用されてきたが、全体的に見ると、どこかちぐはぐさが見られた印象もある。そんな流れにあって、2代目RX-7は、実に自然にリトラクタブルライトをデザイン全体に定着させている。