レビンで貫くハチロク愛!! 『頭文字D』人物列伝12【秋山渉 編】


 1人の青年がクルマと出逢い、その魅力にとりつかれ、バトルを重ねながらドライバーとしても人間的にも成長していく姿を綴った『頭文字D』は、日本のみなならず、アジア各国でも賞賛を浴びた、クルママンガの金字塔である。

 当企画は、同作において重要な役割を果たし、主人公・藤原拓海にさまざまな影響を与えたキャラクターにスポットを当てるというもので、ストーリー解説付き、ネタバレありで紹介していく。

 今回は、主人公である藤原拓海と同じ“ハチロク”を駆る埼玉の雄、秋山渉を取り上げる。叩き上げのド根性と愛車への熱い思いで磨かれたドライビングテクニックとは?

文/安藤修也 マンガ/しげの秀一

【画像ギャラリー】秋山渉の愛車カローラレビン(AE86型)を見る


■秋山渉はどんな人物?

 埼玉県在住の青年。チームに入っている様子はないが、走り屋としてはかなりの腕前と知られていて、近隣の走り屋たちに仲間は多い。家庭環境や従事する仕事などについては作中で記述はないが、それほど裕福な生活はしていないようで、愛車のチューニングに苦労している描写も見られる。

 家族として登場するのが、妹の和美。彼女に対して厳しい言葉を投げかけることもあるが、それも妹のことを思う気持ちゆえ。一時期、和美は藤原拓海の親友であるイツキといい仲になりそうだったが、最終的には結ばれず。

 なお、イツキは同じレビン乗りということで、走り屋としても、人としても渉に憧れているが、それに対して和美は「やめた方がいいよ。どこがいいの…あんなの」と、兄に対して冷たい発言をしている(笑)。

 しょうゆ顔の2枚目系お兄さんだが、伸びきった襟足や極めてカジュアルな衣類を見るかぎり、それほどファッションやルックスにお金をかけるタイプではないようだ。40代以上の読者であればわかると思うが(苦笑)、「自分にかける金があれば愛車につぎ込む」というのは、秋山渉にかぎらず、資金のやりくりに苦しむ当時の若い走り屋に多かったことである。

 作中を通して感じとれるのが、クルマに対する問答無用の愛。そのあたりは一本筋が通っており、ひとつのことにのめり込む性格とも言える。目的のためには努力を惜しまず、血と汗をガソリンに変えて走る、生粋の走り屋だ。また、彼が運転している姿も、やはり非常に熱中している様子が感じられ、他のどのキャラクターより強烈な威圧感がある。ブレがないキャラなのだ。

■愛車への思い入れも人一倍強い

 愛車はカローラレビン(AE86型)。最初の登場時、拓海とバトルした際はターボチューンであったが、後のプロジェクトDの埼玉遠征時に高橋啓介とバトルした際は、ターボをスーパーチャージャーへと換装している。いわゆる“ドッカンターボ”から、ダイレクトなレスポンスのスーパーチャージャーに変更したことで、トータルで以前より速いクルマへと仕上げている。

 この過給機の変更という大きめのチューニングプラン修正についても、拓海に負けて以降、愛車のエンジンをブローさせるほどホームコースの正丸峠を熱血に走り込んだことが遠因だという。妹の和美によれば「メンテに使うお金をすべてガソリン代につぎこんだ」とも。しかし、敗北を糧にしてさらにクルマにのめり込むその姿勢も、一本気な彼にとっては自然なことだったのかもしれない。

 また、愛車であるAE86型カローラレビンへの思いの深さも彼ならでは。当初は、古いクルマで最新モデルや高性能車に打ち勝つことを、ハチロクを所有する一番の理由としていたようだが、後半ではチューニングと走り込みを重ねて知識と経験を深め、その思い入れをさらに強くしているように感じられる。父親のクルマを譲り受けた形でハチロクへの知識に乏しい拓海や、その走り方から愛車への愛がまったく感じられない(笑)ハチロク乗りの乾信司らとは大違いである。

次ページは : ■ドラテクは相当なレベルだが真の実力は未知数?