1人の青年がクルマと出逢い、その魅力にとりつかれ、バトルを重ねながらドライバーとしても人間的にも成長していく姿を綴った『頭文字D』は、日本のみなならず、アジア各国でも賞賛を浴びた、クルママンガの金字塔である。
当企画は、同作において重要な役割を果たし、主人公・藤原拓海にさまざまな影響を与えたキャラクターにスポットを当てるというもので、ストーリー解説付き、ネタバレありで紹介していく。
今回取り上げるのは、プロジェクトDラストバトルとなったサイドワインダー戦で、相手の参謀役として活躍した久保英次。作中一、二を争う頭脳戦が繰り広げられる!?
文/安藤修也 マンガ/しげの秀一
■久保英次はどんな人物?
中年の星である。
本稿では第一回の「藤原文太」編以来となるが、実は『頭文字D』には魅力的なオヤジキャラクターがキラ星のごとく登場している。文太然り、パープルシャドウの城島俊也然り、同じく星野好造然りである。が、この久保英次がこれらのキャラと異なるのは、作中で、いっさいクルマを運転しないことだ。
■Vol.611「もうひとりの天然(後編)を1話丸ごと読む!
では、いったいどういった形で登場したのか。それは、プロジェクトDにとって最終バトルとなった神奈川エリア第4戦の相手、サイドワインダーの「雇われ参謀」役としてである。
プロジェクトDの高橋涼介と同様、チームをサポートする司令塔として久保英次が置かれたことで、サイドワインダーのラスボス感が高められるのと同時に、他のチームとは違ったスケールで描かれていることがわかる。
スタイルがまたなんとも味わい深い。見事な中年太りなのである。服装は主にポロシャツをズボンにイン。頭は7:3、いや9:1くらいで分けられており、これがツーブロックであれば、今なら最先端だ。ルックスのいいキャラクターばかりが目立つ『頭文字D』だが、この久保はたとえメタボオヤジであっても、城島や星野などはひと味違ったカリスマ性が感じられる。
その魅力の一端は彼の頭脳にある。得意なことはデータ収集で、車両ごとの特性を見抜き、対策を考える。これまで登場したオヤジキャラたちと比べて、あきらかに異能だ。現在はショップの社長を務めているが、関西弁なので基盤は関西方面なのかもしれない。レース業界にも足を突っ込んでいたようで、「長いことこの業界にいる」と話す。
なお、サイドワインダーの北条豪からは、「ドライバーをコンピューター制御のサイボーグに作り替えることこそ……あんたのかつての仕事だったんだろ」と言われている。