イニDの頭脳にしてクールなイケメン!! 『頭文字D』人物列伝23【高橋涼介 前編】

■トラウマを克服し、前へ進もうとする勇気

 高橋涼介は、主人公である拓海に歩むべき場所を示す人物である。それまで拓海がこもっていた小さな世界から抜け出させて、彼に手を差し伸べる偉大な存在として描かれている。

 しかもその手法は、自分の理想を追求する部分と本人の意思を尊重しようとする部分とを見事に両立しながら、拓海本人を納得させたうえで、ちょっとコミュ障的な拓海の心を開いている。何科を目指しているのかはわからないが、きっと将来はいい医師になるに違いない。

 その一方で、涼介は自分の生きる場所を達観していることもすごい。プロジェクトDという壮大な計画を思いつきながら、自身はドライバーではなく、チームを率いるリーダーとして後方に控えるのである。もちろんこの計画はすべて涼介の思うままに達成され、彼が考えた「D」の意味も分かることになるのだが。

 物語後半に明かされることになるが、実は涼介自身も心に闇を抱えている。天才的な頭脳を持ちながら、いつも苦しみ、悩み、悶々としている。最も失いたくなかったものを失ったというトラウマ。

 しかし、峠バトルという形のイニシエーション(通過儀礼)を経て、自らの力でそれを吹っ切り、成長を果たすことになる。この涼介の心の旅立ちを見るためにも、『頭文字D』はラストシーンまで見逃すことはできないのだ。

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