連載期間18年の間にコミックス全48巻を刊行し、一大ブームを巻き起こしただけでなく、現在も読まれ、そしてさまざまな角度から検証され続けて、ファン層を拡大しつつある怪物マンガ『頭文字D』。
同作品に登場したクルマたちの世界観と魅力を読み解いていく本連載。今回紹介するのは、トヨタ MR2(2代目=SW20型)だ。峠の下りでは有利なはずのミッドシップレイアウトでありながら、主人公のハチロクに敗北を喫する同車。そこに至ったプロセスと苦悩を読み取っていこう。
文/安藤修也 マンガ/しげの秀一
■第1回 佐藤真子の愛車「日産 シルエイティ」編
■第2回 中里毅の愛車「日産 R32型スカイラインGT-R」編
■第3回 須藤京一の愛車「三菱 ランサーエボリューションIII」編
■若者たちの手が届くMR車として
現在、日本車で「MR」、つまり「ミッドシップ」のクルマと聞けば、多くの人が頭に浮かべるのはホンダ NSXかもしれない。しかし、1980~1990年代には、若者たちの手が届くクラスにミッドシップマシンが、たしかに存在した。
【画像ギャラリー】頭文字Dの名車を実車で見る! トヨタ MR2(SW20)
ミッドシップに2シーター、リトラクタブルライト、そしてスポーティさを際立たせるリアウイングと、ディテールだけ並べていくと、まるでスーパーカーのようないでたちを想像させる。
しかし、1984年に初代モデル、1989年に2代目モデルが発売された、このトヨタ MR2の実際の姿は、コンパクトな全長のライトウェイトスポーツ。どちらかといえば「美しさに見惚れる」という方向性ではなく、(いい意味で)ホビー的な薫りがプンプンするモデルだった。
つい乗ってみたくなる手軽さは、同モデルのようなスポーツカーのチャームポイントであり、販売的にも強みと言える。ただ、実際に手を出してみた多くのオーナーが、その扱いづらさに手を焼いた。
ミッドシップという駆動方式の特性上、限界領域でリアが滑った時の挙動はとにかくシビアだったが、このじゃじゃ馬のような扱いづらさも、後のMR2の評価を高くした武勇伝となっている。