連載期間18年の間にコミックス全48巻を刊行し、一大ブームを巻き起こしただけでなく、現在も読まれ、そしてさまざまな角度から検証され続けて、ファン層を拡大しつつある怪物マンガ『頭文字D』。
同作品に登場したクルマたちの世界観と魅力を読み解いていく本連載。今回紹介するのは、『頭文字D』登場車種のなかでハチロクと、一、二を争うほどの人気を誇るピュアスポーツ、RX-7だ。プロジェクトDのヒルクライムのエースが駆る「セブン」の魅力をひも解いていく。
■第1回 佐藤真子の愛車「日産 シルエイティ」編
■第2回 中里毅の愛車「日産 R32型スカイラインGT-R」編
■第3回 須藤京一の愛車「三菱 ランサーエボリューションIII」編
■第4回 小柏カイの愛車「トヨタ MR2(SW20)」編
■第5回 二宮大輝の愛車「ホンダ シビックタイプR編」
文/安藤修也 マンガ/しげの秀一
■デザインは現代スポーツカーの到達点のひとつ
「セブン」と聞けば、名作と呼び声の高いデヴィット・フィンチャーの映画を思い浮かべる人も多いだろうが、我々カーマニアにとっての「セブン」といえば、やはり「RX-7」のことである。
買ったことのない人、乗ったことのない人も多数いるだろうが、巷でその存在を知らない人はいないし、このクルマのことを(燃費性能以外)悪くいう人は少ない。その理由を小一時間ほど考えるにつけ、やはり「カッコいい」からに他ならないのではないだろうかと思えてきた。
「カッコいい」とはなんともステレオタイプな表現だが、やはりデザインの良さを抜きにして語れないモデルなのである。
そのスタイリングは、流れるような美しい曲面で構成されていながら、スポーツカー然としたアスリートっぽさがボディ全体を支配している。情緒的で色気があって目を楽しませてくれるのに、激しい走りを想像させるのだ。
【画像ギャラリー】頭文字Dの名車を実車でみる! マツダ RX-7(FD3S型)
まさに、艶やかさと力強さとの融合。当時のマツダの開発陣は魔法使いか何かなのだろうか。その手腕には本当に頭が下がる思いである。30年経っても古臭くないどころか、今でもモダンであり、充分通用する。これほどビジュアルの整った日本車は、同モデル以降、登場していないといっても過言ではない。
傑作デザインと呼び声の高かった2代目RX-7の後を継いだにもかかわらず、それを超えてしまったFD3S型。しかしこのクルマ、スタイリングは白眉であるが、美しさだけではない魅力も兼ね備えていた。
それは優れた操作性であり、ロータリーエンジン搭載車という孤高の存在感である。『頭文字D』を読めば、実車のステアリングを握らずとも、そのあたりがダイレクトにわかってくる。