“死神”北条凛の愛車R32型スカイラインGT-R!『頭文字D』最後の公道バトルの全貌

■2組の兄弟による成長のストーリー

 2台のバトルシーンは言わずもがな素晴らしいのだが、ラストシーンでは、まさにマンガ史に残る名ショットが見られることになる。完全にブレーキの効かなくなったスカイラインGT-Rを、涼介のRX-7と、(序盤から2台の後について来ていた池田竜次の)フェアレディZが、間一髪、箱根ターンパイクの料金所前で止めるのだ。

 バトルに負け、人としても涼介に敗北したと気づいた北条凛は、車内でおいおいと男泣きする。結局、北条凛は、自分が香織の思い出に依存していたのだと気づく。そして、個として自立し、新しい世界の扉を開ける。たとえ一度死のうとした人間であろうと、どんな人間にも、日々は頑丈にやってくるだ。

 後日、北条凛は、これからプロジェクトDとのバトルを開始しようという弟・北条豪の前に姿を表す。そして、これまでにしてきたことを謝罪しつつ、「おまえにできる最高の走りをしろ(中略)、そして楽しめ」と豪に言い残した。その言葉を聞き、豪は涙するのであった。

 北条凛と北条豪との関係は、そのまま高橋涼介と高橋啓介との兄弟関係と対比される。かたや鬱陶しい存在として疎んじられているが、高橋兄弟は頼もしい相棒ではある。しかし、どちらも普通の兄弟以上にパーソナルな関係で、自身の分身となるようなキャラクターでもある。

 バトル結果から見れば、兄が高橋涼介に敗れ、その後に弟も高橋啓介に敗れて、高橋兄弟vs.北条兄弟の構図にピリオドが打たれる。

 しかし、この北条凛にまつわる一連のストーリーは、恋愛関係が終わる悲しみと、そこからの再生を描くものであった。そういう意味では、この2つのバトルというのは、兄と弟との上質な成長譚ともいえるのではないだろうか。

■掲載巻と最新刊情報

【画像ギャラリー】北条凛の愛車・R32型スカイラインGT-Rを見る

シリーズ最新刊

MFゴースト9巻

MFゴースト9巻

コミックDAYSで試し読み コミックプラスで買う