■2組の兄弟による成長のストーリー
2台のバトルシーンは言わずもがな素晴らしいのだが、ラストシーンでは、まさにマンガ史に残る名ショットが見られることになる。完全にブレーキの効かなくなったスカイラインGT-Rを、涼介のRX-7と、(序盤から2台の後について来ていた池田竜次の)フェアレディZが、間一髪、箱根ターンパイクの料金所前で止めるのだ。
バトルに負け、人としても涼介に敗北したと気づいた北条凛は、車内でおいおいと男泣きする。結局、北条凛は、自分が香織の思い出に依存していたのだと気づく。そして、個として自立し、新しい世界の扉を開ける。たとえ一度死のうとした人間であろうと、どんな人間にも、日々は頑丈にやってくるだ。
後日、北条凛は、これからプロジェクトDとのバトルを開始しようという弟・北条豪の前に姿を表す。そして、これまでにしてきたことを謝罪しつつ、「おまえにできる最高の走りをしろ(中略)、そして楽しめ」と豪に言い残した。その言葉を聞き、豪は涙するのであった。
北条凛と北条豪との関係は、そのまま高橋涼介と高橋啓介との兄弟関係と対比される。かたや鬱陶しい存在として疎んじられているが、高橋兄弟は頼もしい相棒ではある。しかし、どちらも普通の兄弟以上にパーソナルな関係で、自身の分身となるようなキャラクターでもある。
バトル結果から見れば、兄が高橋涼介に敗れ、その後に弟も高橋啓介に敗れて、高橋兄弟vs.北条兄弟の構図にピリオドが打たれる。
しかし、この北条凛にまつわる一連のストーリーは、恋愛関係が終わる悲しみと、そこからの再生を描くものであった。そういう意味では、この2つのバトルというのは、兄と弟との上質な成長譚ともいえるのではないだろうか。
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