拓海、覚醒前夜の分岐点!『頭文字D』人物列伝18【藤原拓海 後編】

■拓海をその気にさせたなつきの懇願

 この頃の拓海といえば、群馬勢の脅威となっていたエンペラーのランエボIVを打ち負かした後であり、周囲に盛り立てられつつではあったが、実戦経験を積みながら自身のドライビングテクニックも猛スピードで成長させていた。一方で、高校生活では茂木なつきと急接近するなど、むせかえるほど濃厚な青春を駆け抜けている時期であった。

 ある日、なつきと街を歩いていた拓海は、サッカー部時代の先輩である塚本と出会い、話の流れから塚本の愛車180SXで夜の赤城山へギャラリーとして出向くことになる。

 しかし道中、塚本のド下手な運転に酔ってしまったなつきは、山頂で同様にギャラリーをしていたカップルのクルマにぶつかってしまいトラブルに。帰路は拓海がハンドルを握ることになるのだが、走り始めてすぐ、トラブルの相手カップルが乗ったクルマを見つける。

 「あのクルマ追ってー」「ギャフンと言わせてやんないと気がすまなーい」となつきに懇願され、なにか吹っ切れたかのようにそれに応じる拓海。一瞬で走りに入り込む圧倒的な集中力、相手の実力を見極める眼力、ハンドリングの確かさ、ブレーキングの妙……それらを実に堂々とした態度で繰り出し、カップルの乗るS13シルビアに勝利するのであった。

 そのスリリングな走りは、読んでいるこちらも手に汗握るほど。助手席の塚本先輩は当然のように悲鳴をあげるが、後席のなつきは意外にも平気な顔をしていて、「怖いどころかめちゃめちゃ楽しかったよー」とのこと。まったく身のほど知らずの女子とは恐ろしいものである(笑)。それにしてもこの刹那、初めて乗ったクルマで初めて走る道を、凄まじい速度で走り抜けた拓海の類まれなる適応能力には驚かされるばかりだ。

■この後、拓海は凄まじい速度で成長する

 『頭文字D』にしてはポップな展開である。なつきとの恋愛風景をメインに普通の高校生らしい等身大のエピソードを据えながら、彼女に言われて他車とバトルする流れにつなげている。

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 一見すると、まったく意味のない休憩話のような気もするが、しっかりと拓海のドライバーとしての成長も描かれている。ただ、それを強調するのではなく、恋愛ストーリーの一部として、ふわっと描かれているあたりが新鮮に映るのだ。

 ここまで、そしてこの先のような実力者たちとの男臭いぶつかり合いが続くことになるが、合間で読めるこのような拓海の青春エピソードもやはり楽しいし、興味深い。それは読者の誰もがかつて味わったであろう、ハイティーンの生き生きとしている様子、若者の素晴らしい躍動感が味わえるからに違いない。

 拓海は、ランエボに打ち勝った後「もう秋名では走らねーよ」とイツキに宣言している。いわばこの頃は彼にとっても過渡期であり、走り屋としての曲がり角でもあった。

 初めて乗ったクルマでバトルをしたこと、そしてアウェイの地である赤城山を走ったことで、ひとりの走り屋として新たな方向性を見つけたのであろう。少なくともずっと野心を持たなかった拓海が、自分の走りに自信を見出し「速く走りたい」と考えるようになる。

 なお、この後の恋愛パートでは、なつきが正面から拓海と付き合おうと決心する一方で、衝撃の告げ口電話を受けて、拓海が苦悩する姿が描かれることになる。走りの面での成長とともに、人間としても、苦渋を味わう拓海は凄まじい速度で進化することになるのであった。

■1話丸ごと掲載/Vol.94「なつきちゃん ギャラリーに行く」

■掲載巻と最新刊情報

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