■4WDの特性を活かして戦う
そんなR8が『MFゴースト』作中に初登場したのは、第2話。MFG第1ラウンド「小田原パイクスピーク」の予選である。カーナンバー5をつけて疾走するR8のグレードは、「 V10プラス」と表記されている。これは2代目の初期モデルで、2016年から2019年まで販売された、当時のトップグレードであった。
ドライバーは27歳の坂本雄大。ドライビング中でも常にパーカーのフードを被ったまま、そしてサングラスをかけたままという特異なファッションで、クセの強そうな長い前髪、そしてアゴの無精髭と、ルックスだけでもキャラがかなり立っている。今年で4年目の参戦だと発言も聞かれるベテランドライバーだが、因縁深い相葉からは、「ダークサイドの暗黒卿」と呼ばれている。
予選の結果は、ポルシェ2台に続いて3位を獲得した。前途揚々と思いきや、スタートして以降、後方からGT-Rに攻め立てられ続けられ、1周目の通称”カマボコストレート”でスリップストリームからオーバーテイクされてしまう。しかしその後も引き離されることはなく、熾烈な3位争いを展開。
後方から追いついてきたフェラーリ488GTBに、接触ギリギリで追い抜かれると、坂本は「今のは審議だろ!!」とシャウト。この後も追い抜いたドライバーに対して坂本が抗議する場面は散見され、見た目に違わずエキセントリックな性格だとわかることになる。レース自体は、最終的にブレーキングミスしたGT-Rの前に出て、見事4位の座を確保した。
■ル・マンウイナーとしてのプライドに期待
第2ラウンドの「芦ノ湖GT」では、予選8位と躍動できなかったが、決勝レースのコンディションは雨! 濡れた路面ではトラクション性能がものをいう。4WDの特性を活かした攻めのレースが期待されたものの、7位走行中に後方から86が迫ってくる。三国峠では、コース取りの巧みさとドリフトテクニックでパスされてしまう。さらにR8と同じ4WDで絶好調のGT-Rとエキサイティングなバトルを展開。車体をぶつけられ、マシンを壊したくない坂本は「戦略的撤退」を決め込んで、7位フィニッシュした。
第3ラウンドは「ザ・ペニンシェラ真鶴」。予選で振るわず9位スタートとなったあと、中段グループがバラけず、NSXにパスされてしまった。さらに、終盤にはまたもGT-Rとサイドバイサイドを繰り広げることとなり、最終的には先にチェッカーを許してしまう。この時のGT-Rの走りが物議を醸し、一旦、審議になったものの裁定はフェア。結果、11位フィニッシュとなった。
R8は3戦を終えた時点で、前年ランキングと同じ5位につけているものの、ここまでレース中に大活躍するような場面が見られていない。ドライバーのキャラ的には、主役になる可能性は高くはないのかもしれない。しかし、世界3大レースのひとつ「ル・マン24時間レース」でウイナーに輝いたモデルとしてのプライドにかけても、このままシーズンを終えられない。奮起が期待される。
■掲載巻と最新刊情報
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