■群馬プライドを継承することの意味
かくして実際にラウンド3「ザ・ペニンシュラ」の予選を走った結果、瀬名は暫定7位のタイムを叩き出す(最終的には8位で予選通過)。 MFGの六本木本部でもどよめきがあがるほどの快挙であった。またこの時、「ポルシェのアカデミーも、フランスへの留学も、英国の名門レーシングスクールも……そんなものは全部クソだ。MFGに必要なのは公道(ストリート)センスさ……」と思いを吐き出しており、自分のバックボーンは「群馬プライド」だと主張。
決勝レースでも、夏向が腕を痛めていたとはいえ、狙ったポイントでスパッと86をオーバーテイクし、ハイパワーのBMW M4に対しては、外から豪快に被せている。さらに、ランボルギーニ ウラカンとのバトルでは、半島区間の3つのセパレートエリアでテクニカルな走りを見せて勝利。さまざまな走法を見せながら初レースを5位でフィニッシュしている。
これについては、高橋啓介が「瀬名の最大の強みは、モンスターじみた吸収力だからな……一度体験させて見せてやれば、すごいスピードでそれをとりこんでしまう天性のセンスがある……」と語っており、今後さらに速くなることを匂わせている。
瀬名自身も、「関東最速プロジェクトを完遂し、MFGを立ち上げたリョウ・タカハシを頂点に、脈々と流れる公道最速のDNAはボス(高橋啓介)からオレへと受け継がれている」と自らの毛並みのよさを語る。
1レースしか終えていない現状だが、尊敬する啓介と同じくプロジェクトDのエースであった藤原拓海の教え子である夏向への対抗心が丁寧に描写されており、読んでいるこちらとしても、どちらかといえばクールでポーカーフェイスな夏向と比べて、痛快な走りとパッションを見せる瀬名に感情移入してしまいがち。今後の瀬名の進化とレース展開に期待が高まる。
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