■愛車RX-7も啓介らしい仕上がりに
愛車はRX-7のFD3S型で、当初からチューニングされた形跡は見られたが、物語中盤、そして後半になるにあたり、装着されるパーツはアップデイトされていく。もともとFD3S型RX-7というクルマは、アフターパーツが多いモデルではあるが、「プロジェクトD」のプロ顔負けの知識と腕を持つメカニックと高橋兄弟らの協議によって装着されていたのだと考えられる。
もちろん外見だけでなく中身も相当いじられていたはずだが、結果的に、ドライバーの高橋啓介のルックスとリンクした雰囲気の実に戦闘的で精悍な仕様に仕上がっている。
プロジェクトDの茨城遠征においても、それまでの姿から一新。埋め込み式のヘッドライトや地面スレスレのエアロバンパー、吊り下げ型のリアウイングなどが採用され、まるでGTカーのような雰囲気へと変貌を遂げた。そしてこのルックスが啓介のFDにとって事実上の最終仕様となっている。
この茨城遠征でのバトルの相手は、R34型GT-Rを駆る星野好造。「ゴッドフット」の異名を持つ中年で、言うまでもないが、ここまでの同作では自他ともに認める最強の相手であった。
バトル前にはしっかり「高橋啓介です」と年上の人物に対して敬語を使っていることから、人としての成長が見えるということはさておき(笑)、さすがの啓介もこの神業のようなペダルワークを操るといわれるライバルを前に、すこし緊張が見え隠れしている。
このバトルのコースは上りと下りの複合コースということで、いつものヒルクライムだけでなく、ダウンヒルのテクニックも試されることとなった。
■成長も闘争心も見せつけて勝つということ
兄でありチームリーダーでもある高橋涼介が立てた作戦は、前半のヒルクライムでタイヤに負担をかけずに温存し、ダウンヒルで勝負に出るというもの。そのため、バトルのキモとなったのは、タイヤに負担をかけずに最大限のスピードを引き出すアクセルワークと、渾身のダウンヒル。
■Vol.394「ゴッドフットはオレが倒す」を1話丸ごと読む!
1本目はGT-Rが先行し、RX-7は追う展開。ここで啓介はタイヤマネージメント能力で飛躍的な成長をみせ、ダウンヒルではRX-7がGT-Rを追い詰めたが決着はつかなかった。
2本目はRX-7が先行したが、パイロンターンの際に老獪かつ脅威的な技で追い抜かれてしまう。その後のダウンヒルでは、GT-Rが啓介の動きを牽制しようとドリフトを連発すると、啓介も「FR乗りの意地」でドリフトを敢行! 思考でなく闘争心。成熟したといっても啓介らしい一面を見せる。
互いにテンションが上がりまくった両ドライバーだったが、やはりタイヤが終わったGT-Rはコーナーで踏ん張りきれない。RX-7はアウトから豪快にGT-Rを抜き去るのだった。
勝因が高橋涼介のプロデュース能力の高さにあったのは間違いない。しかしこれは間違いなく啓介にとって、とてつもなく特別な要素が入っていたバトルであった。啓介が“何か”を感じ得たのと同時に、走った2人のみがそれを理解し、テクニックとプライドをさらけ出し、狂喜した。
このバトルを見た拓海は、「おれはこわいですね…今日の啓介さんのバトルが……」と言っている。それはつまり、普段はヒルクライム担当である啓介のダウンヒル走行技術が飛躍的に成長していて、ダウンヒルを本気で攻めた時の底力を見せつけられることが恐ろしいのだという。
作中、4WD車に挑む啓介の姿は何度も描かれており、啓介を経て、FRの魅力をさらに知った読者も多いという。結果として、啓介のFR愛は実際の峠シーンにまでさまざまな影響を及ぼしたが、それはRX-7に限らず、乗った人の世界観を変えたクルマの魅力、クルマへのこだわりは、時代が変化してもクルマ好きたちの胸の奥深くに刻み込まれている。
高橋啓介は、そんなことを中年読者に思い出させてくれる名キャラクターでもある。
■1話丸ごと掲載/Vol.349「ゴッドフットはオレが倒す」
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