■見るものすべてを夢中にさせる男
作中では、主人公である藤原拓海はもちろん、高橋啓介にも恋愛パートがあった。では、プロジェクトに熱心に打ち込む涼介はどうなのかといえば、やはり彼にもそういったエピソードが描かれていた。
しかし、彼の相手だけがすでに亡き人であるというのは、熱量の多いファンを持つ主人公的キャラ3名のなかにおいては、やや重く、特異な設定であったと言える。
バトルマンガでの恋愛パートというと、ついつい単調で箸休め的なものになりがちだが、亡くなった相手を想い、当時の恋敵とバトルする(そしてその相手も死にかける)という仕掛けを用意することで、涙の演出や緊張感を創出してストーリーに大きな起伏を与えている。
さらにこのバトルは、涼介のドライバー人生に終止符が打たれることになる重要なものとなる。死んだ彼女を深く想う気持ちに抗わず、あるがままの感情に身を委ねたバトルを終えたことで、ついに重い鎧を脱ぎ捨て、身軽な状態で「プロジェクトD」のラストバトルに挑むことになるのだ。
いつも深遠な口調で仲間に語りかけ、圧倒的な真摯さと包容力を備えている。その実、死んでいった恋人への泥臭いほどの想いを抱きながら、いつも色気と影とを併せ持った瞳をたたえている。ルックスは常にスタイリッシュで、瑞々しさを感じさせる。
誰もが羨むような素敵過ぎる男・高橋涼介が、高橋啓介と藤原拓海の表舞台での活躍を紡ぎ出した。涼介が奏でた物語は、他のどんなクルママンガより見事なドラマを醸成したのである。
■掲載巻と最新刊情報
【画像ギャラリー】『頭文字D』人物列伝24【高橋涼介 後編】(6枚)画像ギャラリー