『頭文字D』名勝負列伝18 ハチロク以外で魅せた兄弟車対決! 180SX 対 S13シルビア

【バトル考察】

 奇しくも同門(兄弟車)対決となったこの2台の戦い。いろいろな要素が詰まった情報量の多いバトルだが、ひとつずつ解説していこう。まず乗員について、拓海が運転する180SXは3人乗車だが、対戦相手のS13シルビアは2人乗車。乗員1人分の重さのハンデを背負っていることになるが、後席にも重量がかかることで、リアのトラクションには好影響ともいえる。

 また、普通に考えれば、拓海が自宅のハチロク以外、ほぼ運転したことがないのは不安要素である。ガソリンスタンドでアルバイトしているため、洗車などで移動のために運転することはあるかもしれないが、たいした影響はないだろう。

 しかし、かつて一度だけ池谷本人にせがまれて彼のS13を運転したことがあり、S13シルビアと180SXがプラットフォームを共有する兄弟車ということもあって、それが180SXに慣れるのに時間がかからなかった要因になっているかもしれない。ま、拓海ほどの超人ならそういったことはあまり関係ないのかもしれないが(笑)。

 さらにこのバトルは、まだ正式には付き合っていないが、拓海のなつきへの想いの強さがよくわかるエピソードとなっている。なつきの意見や希望はすべて叶えようとする拓海。オーナー塚本の意見は無視してでも(というか耳に入っていない)、相手を追えと言われれば素直に追う。このあたりに垣間見える、若さ、そして情熱がまぶしく、また中年世代からすれば懐かしい。

 そして、拓海がなつきに「やってみる」と言うなり、急加速を始める180SX。拓海は180SXをまるで自分の愛車のように操り、ドリフトさせながら、巧みに下りコーナーを攻略していく。助手席で塚本が「ぎょええええ~っ」と叫び続けるなか、拓海は「よーし、だいたいわかった」と余裕の表情だ。なお、超スピード領域を体験したなつきは、「す…ごい!! なにこれ!?」とトランス状態で恍惚の表情を浮かべている。

 あっという間に追いつかれたS13シルビアの車内では、カップルの女が「なにやってんのよォー。追いつかれてるじゃない」と怒るが、男は「めちゃくちゃに速い…レッドサンズのトップクラスレベルかも…何者だあの180!?」と驚愕している。一方で余裕の拓海は「かなりうまい奴だけど抜けない相手じゃない」と敵の実力まで把握していた。

 さらに、「あんまりのんびりしてるとブレーキ終わる…効きがいい今のうちに一回こっきりの超ヤバブレーキングでしかけるか…」自己分析した拓海が、まだ峠バトルへの慣れがそれほど十分ではないにも関わらず、しっかりと成長している姿を見せる。

 そして、「勝敗は…一瞬にして決した!!」(ナレーションより)。コーナー入り口でここぞとばかりにインをついた180SXに対し、S13シルビアはターンインに失敗してアンダーステアを発生させてしまう。追い抜きざまに「バーカ」とひどいヤジ(笑)を飛ばしながら舌を出しておどけるなつき。それを見て、さっきいじめた女だと気づいたカップルはショックを受けるのであった。

 バトル後、拓海は「それにしてもパワーあるクルマだとやっぱラクだよな…。直線で相手についていけるだけの馬力があれば…何もかも全然変わってくるのに…」と考える。これが、その後のハチロクのエンジン載せ替えにつながるフックとなってくるのだが、それはまた後の話である。

■掲載巻と最新刊情報

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