【バトル考察】
プロジェクトDが、先行か後追いかの選択権をホームチームである246へ譲ると、「相手をじっくり見たい」という思いから246側は後追いを選択。小早川はコースが低速ステージであることを鑑みて、2駆相手に加速勝負で負ける心配はないと予想。「1本目は様子見、2本目は勝負」という作戦を立てていたのだが、結果的にはここに落とし穴があった。
一方、啓介はまったく気負いなくFDに乗り込むと、横にいた涼介に向かって「オレの仕事の半分は、もう昨日のうちに終わってるんだ…」と吐露している。その意味はバトル後半で明らかになるが、後半の高速セクションでスパートをかけること、そのためにクルマの仕上がりとコースの攻略を高いレベルでプラクティス(練習走行時)から完成させておくということであった。
序盤、後方から啓介のFDを眺めていた小早川は、「高速区間ではさすがにフットワークもいい…」とFDのことを高く評価しつつも、まだ真価を見抜いていない。そして、この先の勾配がきつく路面の悪い荒れたタイトコーナー区間でレベルを測ろうとした。
実際にタイト区間に入ると、FDのセッティングのレベルの高さを見抜くと同時に「何かが足りねぇ」と感じた小早川。さらに“つかずはなれず”の状態でFDを追い続けると、「乗り手の存在感が希薄すぎるんだ…」ということに気づく。そして、これまでプロジェクトDが勝ってきたのは、ドライバーの能力よりクルマ作りを含めたチームとしての総合力が要因だったと決めつけてしまった。
コースの中間地点を越え、勾配がゆるくなる。啓介は、涼介との計画通り、スパートをかける地点をはかる。ちなみにFDのセッティングも、ここ一発のスプリントのキレを重視している。ものすごくピーキーで、スピンにいたるまでのコントロール幅が狭い足まわりになっているため、長時間のプッシュは不可能だった。つまり、1本目のスプリント勝負で失敗すれば自ずと敗北が見えてくるという綱渡りセッティングだ。
そして、道幅が狭く視界も悪い区間に突入した時だった。小早川が「いくらなんでもここでは来ない…」と判断した刹那、前方のFDがテールランプの残像を残してコーナーの先へ消えた!
慌てる小早川! すかさずアクセルを全開にしてFDを追う! しかし、コーナーでFDにグングン引き離される。そしてラストの超低速区間に入り、小早川は「もう一度くっつけば…まだ2本目がある…!!」と気持ちを引き締めた。
ところが、差は縮まらないどころか、小早川のランエボVIIがいくら踏ん張ろうとも、それからFDの後姿を見ることはできなかったのである。恐るべき高橋啓介の集中力と本気のラストスパート。
結果は、FDによる7秒逃げ切りのパーフェクトウィン。高橋啓介はFRのRX-7で、またもやハイパワー4WDに鮮やかに対して勝利を飾ることになる。啓介が思い描いていた通りの走りを実現できたこと、そして事前に策を練った兄の涼介による戦略的な勝利でもあった。
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