拓海のハチロクを継ぐカナタの愛機!!『MFゴースト』名車列伝06 トヨタ 86 編


 伝説のクルママンガ『頭文字D』の意思を現代に受け継ぐ次世代のクルママンガ、『MFゴースト』。2017年の連載開始時から圧倒的な読者人気を獲得しており、13巻発売時点の現在で、ついに単行本累計発行部数320万部を突破した。

 同作品に登場したクルマたちの世界観と魅力を読み解いていく本連載。第6回となる今回は、主人公・片桐夏向が駆るトヨタ 86をフィーチャー。はたしてこのクルマは、AE86の何を受け継ぎ、何を後世に残そうとしているのか?

文/安藤修也
マンガ/しげの秀一

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■冬の時代を経て誕生した正統派スポーツクーペ

 『頭文字D』の熱心な読者であれば、トヨタ 86のことはよく知っているはずである。藤原拓海とAE86型スプリンタートレノの活躍、そしてそれを支えた読者の熱狂が誕生させたと言っても過言ではないモデルで、近年販売された国産スポーツカーのなかでもその存在感は際立っている。

 日本において2000年代はスポーツカー冬の時代であった。そもそもクーペモデルに対するニーズが減ったことに加えて、ハイパワー車が環境問題対策の影響を受けるなど、1990年代まで人気を博してきたスポーツカーは、この時代にことごとく姿を消していくことになる。スプリンタートレノに関しても同様で、AE86型以後3代続いたものの、2000年にトヨタのラインナップから消滅してしまった。

トヨタ 86(先代型・GTリミテッド)/全長4240×全幅1775×全高1300mm、パワーユニット:2.0L 水平対向4気筒DOHCエンジン、最高出力:200ps/7000rpm、最大トルク:205Nm/6400-6600rpm

 クルマ好きにとって実に寂しいこのような状況に際して、トヨタが2012年に打ち出したのが、新時代のライトウェイトスポーツカー「トヨタ 86」だ。同社が初めてスバルと共同開発した86は(スバル側では「BRZ」として発売)、2+2シートの2ドアクーペで、コントローラブルなFR駆動を採用し、チューニングベースとしても優れたモデルであった。

 若者を夢中にさせるほど、手に入れやすい価格設定とはならなかったが、それでも長らく販売されて2代目へモデルチェンジを果たしている。また、同世代の国産スポーツカーと比べても特別に性能が高かったということはないが、最も価値のあるスポーツカーだったと言いきってしまっても問題ないだろう。

■ドリフトでMFG関係者を驚愕させる

 『MFゴースト』の作中では、主人公である片桐夏向の操る主役格のモデルとして登場。ライバルたちのマシンは海外のハイパワーモデルが多いことに対して、いかんせんトヨタ 86は非力である。

 しかし、MFG第1戦「小田原パイクスピーク」の予選では、夏向は初参戦ながら16位につけて善戦。レギュレーション違反で1名失格者が出たために繰り上がりで決勝レースに出場すると、大胆かつクレバーなレース運びを見せて9位でフィニッシュ。オーディエンスやMFG関係者を驚愕させた。

 そして、第2戦の「芦ノ湖GT」では、最初から期待と注目を集めるなか、またも予選で素晴らしい走りを披露する。その要因は、第1戦終了後にチューナーの奥山広也によって、足まわり、吸排気、ブレーキなどのチューニングが施されたこと。奥山が目指したのは「しなやかにストロークさせて、タイヤのグリップを使い切ったところからさらに粘るような」足まわり。あくまでもサーキット向けでなく、公道レース向けのセッティングである。

 夏向と86は、予選6日目に登場した。芦ノ湖GTのコースはアップダウンが少なく、比較的フラットで、非力な86にとって不利なレイアウトと思われたが、スタート後にゆるく上った最初のチェックポイントで、いきなり13位のタイムを記録する。次に火山灰の細かな粒子が路面に付着した通称「死神(デスエリア)」では、なんと師匠である藤原拓海の「ゼロカウンタードリフト」を披露! これには作中の人物だけでなく、読んでいるこちらも歓声をあげてしまう。

 経過タイムの順位が、10位、9位、8位…そして7位と上がっていくのにあわせて、こちらも俄然テンションが上がっていく。コースの最後エリア、ゴール前の長いストレートやヒルクライムではひとつ順位を落としたものの、最終的には予選順位を8位で確定。この予選における片桐夏向の壮絶な走りは、夏向自身の評価を高めただけでなく、MFGの”パワー至上主義”に終止符を打つものとなった。

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