■ハイブリッドシステムを除去して軽量化?
が、スーパーカーならやはり乗車時の高揚感や、スポーツモデルらしい一体感も必要となってくる。そして当然、同モデルは期待に応えるだけのアビリティを備えていた。
実際に走らせてみれば、まずエンジンを車体中央に搭載するミドシップならではの優れた旋回性を実感できるし、コーナリング性能は「スポーツハイブリッドSH-AWD」によってさらに高められ、曲がりすぎるほど曲がる。また、ミドシップではバランスが失われがちな直進安定性も電動4WDの制御によって揺るぎないものとなっている。
『MFゴースト』の作中に初登場したのは、MFG第2戦「芦ノ湖GT」の予選1日目。第1戦の「小田原パイクスピーク」での最終リザルトが14位だった前園和宏が、雪辱を果たすべくシビックタイプRから乗り換えたのが2代目NSXである(MFGでは、同年内に同メーカーのクルマであれば搭乗車種を変更ができる)。
ただし、MFGには「内燃機関のみ参戦可能」というレギュレーションが設定されているため、NSXは3基のモーターを取り外されており、4WDでもなく、ハイブリッドカーでもない。その影響もあってか、前園はセッティングを出すのに苦労していたようで、第1戦をシビックタイプRでエントリーすることとなった理由は、NSXのコンディションが整わなかったからである。
これはつまり、2代目NSXならではの電子制御による優位性を手放したことになるのだが、タイムアタック中に前園が「2年かけてやっとここまで仕上げたぞ…」と確信をもって発言しているとおり、予選ではなんと5位を獲得! モーター関連のメカニズムが除去されたことで大幅な軽量化が実現し、NSXが本来持つ高い限界性能が発揮されたのだろう。
■高度な走りでクルマ好きを魅了
しかし、決勝レースのコンディションは雨。スタートではトラクションの面で有利な4WDのランボルギーニ ウラカンに先を行かれるが、すぐに抜き返す。その後は3位集団として、ポルシェ 911GT3、フェラーリ 488GTB、そしてウラカン、アウディ R8といった世界トップクラスのスーパーカーらと互角の攻防を続けた。
その後、911GT3がドライバーのミスで3位から陥落し、NSXも4位まで順位を上げたが、後方から追い上げてきた片桐カナタの駆るトヨタ 86とデッドヒート。レースを続行するか否か判断に迷うほど濃霧が立ち込めてきたなかで、視界ゼロをも恐れない勇猛果敢な走りをみせた86に抜かれてしまうが、最終的には5位でフィニッシュしている。ゼッケン13、つまり前年度ランキング13位の前園にとっては、極上の結果と言えよう。
ホンダはNSXのことを「誰もが操ることができる人間中心のスーパースポーツ」と定義しているが、それは初代モデルが視界のよさやユーティリティ性能でファンを魅了したように、2代目もまた、卓越した走行性能と限界領域での操作のイージーさを両立したハイテク機構を柔軟に取り入れることで、同車をユーザーフレンドリーなスーパーカーに仕上げている。
ハイテクの介入度合いは異なるが、高度な仕上がりをみせた走りを披露してくれるという部分では先代型と変わらず、今なお世界中のクルマ好きたちから「羨望」「矜持」といった想いを抱かれるモデルである。
■掲載巻と最新刊情報
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