■モンスターマシンを驚かせるほどの速さ
MFG開幕戦「小田原パイクスピーク」終了後、主人公の片桐夏向がターンパイクでテスト走行していた際に、後方から一瞬で86を抜いていったのが、A110の初登場シーンとなった。改良を施した86で快走していた夏向をいともたやすく追い抜くという離れ技を、いきなりやってのけたのだ。
同車のドアには、ゼッケン4が貼られており、搭乗している沢渡光輝(さわたり こうき)は前年度ランキング4位のドライバー。過去にフランスでのモータースポーツ留学の経験がある猛者であり、実は夏向とは現地のレースで絡んだことのある因縁の相手であった。
開幕戦は彼女とのデートがあり(!)参加しなかった沢渡だったが、第二戦「芦ノ湖GT」の予選ではキレキレの走りを見せる。予選2日目に登場すると、驚愕のコースレコードを樹立したのだ。結果的には、最終日にベッケンバウアーが駆るポルシェ 718ケイマンにタイムを上回られてしまうが、ハイパワー車に乗る上位ランカーたちを驚かすには充分な速さを見せつけた。
そして、いよいよ迎えた決勝レースの天候は雨。ライトウェイトスポーツカーのアルピーヌ A110にとっては有利な局面となる。案の定、1周目からポールポジションスタートの718ケイマンとランデブーする展開となり、3位以下のマシンを寄せ付けない一騎討ちとなった。
■MFG史上最高にドラマチックなオーバーテイク
500馬力超のスーパーカーが揃うMFGにおいて、A110という非力なクルマで参戦することはある意味挑戦であるし、軽さを武器に大排気量・大パワーモデルと争うというのは、まさにトヨタ 86や718ケイマンのそれと同じ構図である。雨に翻弄されるモンスター軍団を尻目に、決勝レース後半戦も、この3台を中心に物語は展開されていく。
2周目、「デスエリア」と呼ばれる火山灰が積もってスリッピーなエリアで、沢渡は勝負をかける。「MFG史上最高にドラマチックなオーバーテイク」と解説が叫ぶほどの走りで、車体をぶつけながらも718ケイマンをパスし、ついに首位に躍り出た。
その後、コース上にはレースが中断してもおかしくないほどの濃霧が発生したため、集中力をマックスにまで高めながらペースメーカーとして前方を走った沢渡は疲労を重ねてしまう。一方、2番手のポジションでスタミナを温存した718ケイマンのベッケンバウアーは、最終週の駅伝ストレート入口のコーナーで勝負を仕掛けるのだった。
最終的には僅差の2位でチェッカーを受けたアルピーヌ A110は、霧の中で驚きの追い上げをみせて4位フィニッシュしたトヨタ 86とともに、このレースの主役といっても過言ではないほどの活躍をみせた。なんといっても「幻のコースレコード」と呼ばれる予選のデモタイムをMFG史上初めて更新したのは、沢渡の駆るA110である。
今後も、主人公のライバルとして、ひと暴れもふた暴れもしてくれることは間違いない。
■掲載巻と最新刊情報
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